国際取引で正しい財務状況を把握する基準と指標

長期投資を行う際は、企業の価値を長期的に正しく評価することが欠かせません。
そのため、短期的な影響は除いて評価する必要があります。
例えば、企業が設備投資やM&Aなどの先行投資を積極的に行えば、短期的に減価償却費が増大したり、のれんを再評価すれば償却費が発生するなど、現金支出を伴わない費用が大きくなり、会計上の利益が小さくなります。そのため、このような短期的な影響を除いた指標を使用して評価を行う必要があります。

長期的な視点で企業価値を評価する指標として「EBITDA:イービットディーエー」があります。

EBITDAとは

EBITDA(イービットディーエー)は、
Earnings Before Interrest(金利)、Taxes(税金)、Depreciation(デプリシエーション、減価償却)、and Amortization(アモタイゼーション、償却)

利払い前・税引き前・減価償却前・その他償却前利益
金利・税金・償却前利益
イービットディーエー以外にも、イービッタ、イービットダー、エビータと呼ばれています。

石油発掘会社や鉱山会社の場合、「探鉱費」を加えた「EBITDAX:Earnings Before Interest,Taxes,Depreciation,Depletion,Amortization and Exploration Expenses」という指標もあります。
税引前利益+支払利息+減価償却費+探鉱費

なお、EBIT(利払前・税引前利益)という概念もあり、これは「Earnings Before Interest and Taxes」の略です。
税前利益に支払い金利を足してやればよいです。

EBITDAは多国籍企業の業績評価や異なる国の同業他社間の業績比較で有用

EBITDAを売上で割った値を「EBITDAマージン」といいます。

企業価値(EV)を売上で割った値を、「EV/EBITDA倍率」といいます。
一般的には、EV/EBITDA倍率は、6倍から7倍前後が目安とされ、それ以上なら株価は割高、それ以下なら割安と言われますが、当てにはなりません。

法人税率や減価償却費は、税法で規程されるため、企業が事業所を置く国の政策によって左右されます。
金利水準も国によって異なるし、特別損益として計上される項目も国の会計基準によって変わってくる。
これらの国による税法、金利、会計基準の違いを取り除いた利益の額がEBITDAになります。

EBITDAの計算式

EBITDAを求める計算式は、複数あります。
中でも、「営業利益+減価償却費」とするのが一般的で使いやすい計算式となります。
そのため、EBITDAは、「減価償却前営業利益」ともいいます。

  1. 営業利益+減価償却費
  2. 経常利益+減価償却費+支払利息
  3. 税引前当期純利益+減価償却費+支払利息+特別損失

営業利益とは

企業の本業で得られた利益です。
減価償却費は、すでに含まれています。

売上総利益(いわゆる粗利)から、販売費および一般管理費(販管費)を引いたものが営業利益です。

減価償却費とは

固定資産(土地を除く)は、時間の経過に伴い、物理的または技術的な価値が減少し機能が低下します。
その価値の低下部分を会計上費用としたものが減価償却費です。
なお、減価償却費は、費用ですが現金(キャッシュ)の支出がない点に注意が必要です。

EBITDAの欠点

EBITDAにも欠点があります。
それは、過剰な設備投資やM&Aによって生じた損失をマイナス要因として取り込むことができない点になります。

過去には、この欠点を不正に活用した事件が起きています。
アメリカの通信事業者ワールドコムは、EBITDAを不正使用し企業価値を過大に見せようとしました。その手法は、他の通信事業者が敷設した光ファイバー回線について同社がリースを受ける際に、その代金を設備投資として計上するというものでした。
本来リース代金は、販売費及び一般管理費として計上すべきものですが、設備投資として計上したために、EBITDAが水増しされたのです。
ワールドコムの株価は、水増しされたEBITDAに基づいて課題に評価されたが、やがて経営実態が明らかになり、同社は2002年に経営破たんしました。

今では、EBITDAのような会計基準に基づかない指標を企業が公表する際には、会計基準に基づく指標を併記しなければならないため、両者を見れば問題ありません。

 

国際会計基準

会計の基準が異なると企業間の評価を比較する際に正しい評価ができなくなります。
そのため、統一的な会計基準の導入が進んでいます。
現在、EU(欧州連合)では、連結財務諸表におけるIFRS(International Financial Reporting Standards)の適用を上場企業に義務付けています。

EU域内ではなくても、EU企業と取引をする限りは、IFRSやこれに類する会計基準を用いるよう求めています。
IFRSの導入は、世界的に進んでおり、全世界が一つの会計基準を持つならば、国際的な取引の中で、相手企業の経営実態を容易に読み取れるようになります。

国際会計基準とは、各国がそこに収束しようとしている会計基準で、現在各国はIFRSに収束しようとしています。

IFRSの概要

IFRS(国際財務報告基準)は、国際会計基準審議会(International Accounting Standards Board)が作成した会計基準です。

EUでの導入が義務化されたのは、2005年です。
現在、100以上の国や地域が用いています。

日本の会計基準は、IFRSと異なり純利益を重視しており、IFRSでは純資産を重視しています。

IFRSのメリット

IFRSを導入するメリットとして、次の点が挙げられます。

  • 国際取引において、相手企業の経営状況を把握しやすくなり、国外の投資家が日本企業に投資をしやすい状況を作ることができます。
  • 国外の子会社と同じ会計基準を使うことで、財務情報を分かりやすく均一な情報として把握できる。
  • 正確に財務情報を比較できる。

IFRSにおける3つの特徴

1つ目は原則主義です。
原則主義とは、解釈指針の他には、詳細な規程や数値基準がほとんど示されていない会計主義のことであり、その分、自由度が高くなります
このため、解釈の根拠を外部に明確に示す必要性があるため、大量の注記がされます。
これに対して、日本基準は細則主義で、会計基準や解釈指針、実務指針等々、細かく規定が定められています。

2つ目は、貸借対照表重視です。
IFRSでは、投資家や債権者が必要としている資産価値を評価する情報として、将来キャッシュフローの現在価値を重視する考えです。
一方、日本では、期間損益を重視する損益計算書重視の考え方となっています。

3つ目は、グローバル基準です。
各国の独自性(例えば、税制など)を加味せず議論や定義も英語で行い、言語差異を防ぐ工夫をしています。

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